引越し営業マンの「できます」だけでは参考にならない
日中明るく開放感があり、耐震性も増すというメリットから、リビングを2階に設定して新居を建てる家庭が増えてきています。
ハウスメーカーでもおすすめされることの多い2階キッチンですが、引越し作業の際に大きなトラブルを招くことが多い事例です。それは、大きな家財が2階に搬入できないというトラブルです。
引越しの見積もりの際に営業マンから「これなら大丈夫です。入ります。」と言われていたとしても、当日作業してみると「無理です。どうやっても入りません。」と搬入を断られることがあります。
階段から家財が搬入できない場合は、外から吊り上げて家財を搬入していきますが、当日判明した場合は追加料金が発生します。
そうならないように現場作業員も努力はしますが、物理的に入らない物はどうやっても入りません。事実私も、営業回りたての新人時代は契約欲しさから「うちならできます!」と言って契約してもらった結果、家財が入らずにお客様の新居へ謝りに行ったという経験もあります。
無責任な営業マンに騙されないように、家財を2階に搬入する際の注意点について理解をしておきましょう。
「芯々90cm」に幅90cmの家財は入らない
大型の家財を2階に搬入する際には、引越しの営業マンには必ず間取り図を見せなければいけません。部屋の間取りを確認させるという意味もありますが、間取り図に書いてある幅の見方を知っているかどうかで、その営業マンが戸建て引越しに慣れているかどうかが分かります。
家の間取り図に記載されている幅の数値は、「芯々」と呼ばれているもので、実際の幅の広さではありません。芯々は「柱や壁の中心から反対側の柱や壁の中心までの広さ」という意味であるため、実際の幅(実寸)は記載されている数値よりも狭いです。
例えば階段の芯々が105cmだとして、その間取り図を営業マンに見せたとき、「幅が105cmまでの家財だったら問題なく作業員で運べますよ」と言う営業マンがいれば、その時点で間取りを読めない営業マンと分かります。
そうした営業マンは引越し料金を抑えるために、2階へ搬入するための外注工事を除いた金額で提示してくることになるため見積もりは安く見えますが、ほぼ確実に当日追加料金が発生します。
建築基準法で定められる芯々の最低値は90cmですが、都内で一戸建を建てると階段の幅が芯々90cmであることが多いです。この芯々90cmの実寸は約75cmであり、入る家財の幅の限界は約60cmと言われています。
ちなみに冷蔵庫の場合、450リットルよりも大きな冷蔵庫は幅60cm以上であることが多いため、その時点で吊り上げが確定となります。
階段に手すりが付いている場合は営業マンに伝える
階段にオプションで手すりを付けた場合は、漏れなく引越しの営業マンに伝えましょう。間取り図だけでは、手すりの有無を見落としてしまうことが多く、間取り図で問題がなかったとしても当日邪魔になることが多いからです。
外せるタイプの手すりであれば問題はないのですが、埋め込み式で外せないような手すりを付けてしまった場合、大型家財は階段での搬入を諦めなければいけなくなるかもしれません。
天井の高さにも注意しなければいけない
大型家財を2階へ搬入する際は、階段の幅だけではなく天井の高さにも注意が必要です。天井の高い・低いと吹き抜けてるかどうかで、幅が問題なかったときに階段から家財が入れられるかどうかが決まります。
階段から大型家財を搬入するとき、最初は階段の角度に合わせて倒しながら登っていくのですが、ずっとその体制を取っていると上にいる作業員へ負担が寄ってしまうため、ゆっくりと家財を持ち上げながら立てていきます。天井の高さは、家財の立てやすさと関係しているのです。
吹き抜け天井の場合
吹き抜け天井の場合は、この家財を立てる行為がリスクなしでおこなえるため、階段搬入の中では最も適した天井と言えるでしょう。
家財と天井の間が1m未満の場合
3階建てなどで天井が低く、家財を持った状態で天井と家財の間が1m未満の場合は、階段からの搬入を諦めましょう。
大型家財は重たいため、階段を登っている際にも何度か持ち直します。その際に勢いよく持ち直すと天井に当たってしまう可能性が高いため、階段からの搬入には向いていない高さと言えます。
階段がどこで曲がるのかも確認する
階段がストレートで、一回も曲がらずに2階に登れる場合は問題ないのですが、曲がり階段であった場合には注意が必要です。階段が曲がっているということは、そこで家財を方向転換しないといけないということになるからです。
幅が通れば方向転換できると思っている方は多く、営業マンですら確認しないこともあります。実は、背が高い家財は幅に問題がなくても、曲がっているところで方向転換できずに搬入できないことがあります。
大型家財を水平に保ちながら持って運ぶということは、相当の負担がかかり危険なため、現場作業員は少なからず斜めにして運びます。斜めにしながら方向転換をするということは、幅に余裕がない場合にぶつかるリスクが高くなるということです。
もし間取り図を見た営業マンが「階段の曲がっている箇所はここだから、注意が必要ですね。」と言ったら、現場作業を知っている「良い営業マン」です。
本当によい営業マンは無理をしない
実はこの大型家財を階段で搬入するという案件は、非常に物損事故が多い事例です。家財が重たいということはそれだけ力が必要になるということであり、家財の重たさに気を取られてしまうため、壁や天井について気遣う余裕がなくぶつけてしまうことが多いからです。
ぶつけるだけでも問題はあるのですが、家財がぶつかるということはそれだけ家財と壁や天井との隙間が少ないということであり、強行突破しようとするとさらに新居を傷付けられかねません。
実際、引越しの営業マンがわざわざ新居まで階段を見に行って、「これならできる!」と自信を持って階段搬入を選んだ結果、家財が階段で入らなったという例も存在するくらい、大型家財の階段搬入はリスキーなのです。
よい引越しの営業マンは、間取り図を見て少しでも無理だと感じた場合、無理矢理階段で運ぶためにどうするのか悩むのではなく、なぜ階段搬入が難しいのか、どういったリスクがあるのか、リスクを回避するにはどうすればいいのかについて細かく説明する方に力を入れるはずです。
階段で大型家財が搬入できない場合は、どうしても吊り上げ業者に外注をして作業してもらうしかありません。
大型家財が階段から入らずに、引越し日当日に吊り上げ業者に連絡しても、当日来てくれることは非常に稀です。そのため、階段から入るという確証がない限り、見積もり時点で吊り上げ業者を予約してもらった方が、料金は上がってしまいますが安心できるのです。
「現場作業員でやるよりも引越し料金が上がります」と説明するのは引越しの営業マンも緊張しますが、よい営業マンは臆さず説明します。なぜなら、大型家財の搬入を吊り上げ業者に任せる方が最善策だと自信を持って説明できるからです。
引越し料金で勝負するために、必要な作業をケチってお得だと思わせるような営業マンは最低です。引越しの見積もりを取るときは、料金だけでなくどれだけ営業マンが自分たちの引越しについて考えてくれているかも判断基準としましょう。