洗濯機やエアコンの取り付けなどオプションは、引越し業者が値引きできない「付帯作業」と呼ばれるものです。引越し料金が10万円から5万円になった、といった体験談は全て車両人件費からの値引きで、付帯作業については必ず定価料金となります。
洗濯機の取り付けは引越し業者に任せることができる
今やどの家庭にも洗濯機ですから、引越しの営業マンは引越しの見積もりに行くと、ほぼ100%「洗濯機取り付け」について相談を受けます。私が見積もりに回っていた際に多かった洗濯機に関する相談は、以下の2つでした。
- 洗濯機の取り付けを引越し業者に任せることができるのか
- 洗濯機の取り付けには費用がかかるのか
まず「①」についてですが、洗濯機の取り付けは引越し業者に任せることができます。洗濯機の取り付けは現場作業員ではなく、各引越し業者の協力会社の作業員によって取り付けられることが多いため、厳密に言えば引越し業者が取り付けるわけではありません。
また引越し作業とは別の日に行うことが多いため、引越し当日は洗濯機が使えません。
「②」については、洗濯機の取り付けはどの家庭にもあるものではないため、「オプション工事」となります。そのため有料です。例外として、引越し業者の現場作業員がサービスで取り付けるという場合もありますが、見積もり時に営業マンに相談するべき項目ではあります。
しかし、引越し業者に任せられるから一安心とはいきません。引越し中の洗濯機回りトラブルは意外と多く、中には損害賠償を支払わなければいけなくなったというケースも存在するためとても注意が必要です。
引越し先で洗濯機取り付け時に起こりやすいトラブル事例
新しい住まいを選ぶときに、洗濯機を置くスペースについてよく考えながら選ぶという人は実はとても少なく、大半の方は「建築法内で建てられている建物であれば市販サイズの洗濯機であればどれも入るだろう」と思って購入してしまいます。
しかし、実際引越し日を迎えてみると、水回りのトラブルや、洗濯機が入らなかったという例は多く、洗濯機の買い替えを余儀なくされたというケースも存在します。
搬出時に洗濯機から水が漏れ出した
引越し作業中では、洗濯機から水が漏れだすというトラブルが頻繁に起こります。
「水漏れ=故障」ということで買い替えを即決してしまう方が多いのですが、これは水抜きせずに運んだ結果、洗濯機内部に残っていた水が漏れだしているだけということが非常に多いので、あまり心配する必要はありません。
慣れた現場作業員であれば洗濯機を運ぶ前に顧客へ水抜きをおこなったかを確認して、やっていなかった場合は水抜きをおこなってくれます。
しかし、必ずしもやってくれるサービスではないという点、水抜き作業自体は大して難しくないという点、水抜きにはそこそこ時間がかかるという点から、水抜きは事前に自分でおこなっておくことをおすすめします。
洗濯機が洗面所に入らない
廊下や洗面所のドアの幅が狭く、洗濯機が入らなかったというケースも少なくありません。見た目以上に大きいことが多いドラム式洗濯機を、単身用物件の洗面所に搬入する際によく起こるトラブルです。
すべての物件で言い切れるわけではありませんが、単身用物件の洗面所はドラム式洗濯機よりサイズが小さい縦型式全自動洗濯機に合わせて設計されていることが多く、ドラム式洗濯機を搬入しようとすると現場作業員がとても苦労します。
現場作業員も何とか洗面所に入るよう頑張りますが、物損事故・瑕疵(家屋の傷)を招きそうだと判断した場合は、洗面所への搬入を拒否される場合がありますので、注意しましょう。
ドラム式洗濯機のせいで、引越し先がかなり狭まりました。ドラム式、本当に入らない! https://t.co/onuGgmVuNc
— Kおーの (@mayuoks) November 21, 2017
防水パンと洗濯機の相性が悪い
また、仮に洗面所に搬入できても、新居においてある防水パンと洗濯機の形が合わなければ、洗濯機の取り付けをすることができない場合があります。
防水パンの幅よりも選択の幅の方が大きい、もしくは防水パンと洗濯機の間が極端に狭い場合は、有料の部品を使って洗濯機の高さのかさ上げをおこなわなければいけません。
かさ上げ用の部品は、引越し業者もしくは取り付け業者が用意していることが多いです。しかし、内覧時や前に住んでいた方から情報を聞き、あらかじめ高さが足りないことが分かっている場合は、自前で用意しておいた方が安くなります。
取り付け後に水漏れが起きた
8割以上の業者が洗濯機の取り付けには費用がかかるのですが、まれに「サービス」として無償で取り付けてくれる業者がいます。これはラッキーだと、その引越し業者と契約したいところですがそれは早合点です。
実は、洗濯機の取り付け自体は説明書さえあれば素人でもできる簡単な作業です。それでも引越し業者が協力会社に任せるというのは、トラブルが起きたときの損害賠償額が尋常ではないからです。
マンションなどの集合住宅で洗濯機の水漏れを放置すると、自宅のフローリングや床に損傷が起こり、下の階や同じ階に住んでいる人たちにも損害が及びます
実際、洗濯機の水漏れを放置した結果、下の階の部屋を水浸しにしてしまい、◯百万円もの損害賠償を支払わなければいけなくなったというケースも存在します。
有料工事を頼みながら水漏れが起きてしまった場合、一定期間を過ぎていなければ、取り付け業者が再度取り付けをおこなってくれます。そもそも、引越し業者の協力会社は洗濯機やエアコンなどの取り付け・取り外しのみをおこなう電気工事の専門業者であるため、取り付け後には水漏れが起きるかどうか動作確認をおこなってから帰るため、あまり心配はありません。
仮に水漏れが原因で近隣に迷惑をかけても、業者の取り付けが原因で水漏れが起きたと証明できれば、取り付けをおこなった業者に責任を取ってもらうことができるため、多少は安心できます。
しかし、現場作業員が無料サービスで取り付けた場合はそうはいきません。無料で行う引越し業者では「無料サービスで洗濯機を取り付けた」という証拠を残さないからです。それは「無料」の「サービス」だからです。
無料で洗濯機を取り付けてくれる引越し業者が、取り付けが原因の水漏れを起こしてしまい、顧客側から責任を追及されても「私どもでそういった工事をした形跡はありません」と言い逃れすることができるのです。
取り付け後に水漏れが絶対に起きるとも言い切れませんが、リスクを考えると無料取り付けをおこなっている業者には洗濯機の取り付けを任せるべきではないでしょう。
準備をしておかないと引越し後に悲惨な目に遭う
今回は引越しにおける洗濯機のトラブルについて紹介してきましたが、引越し中に洗濯機が入らないことが分かった場合は、その後の生活はかなり大変なものになりますし、無駄な出費が増えます。
まず、洗濯機取り付け料が返ってくるとしても、不要になった洗濯機は業者にリサイクルしてもらわなければいけなく、どんな業者でも約5000円ほどはかかるため、大体返金額とトントンです。
洗濯機が新居に収まらなかった場合、新しい洗濯機が取り付けられるまで自宅での洗濯はできないため、近隣にあるコインランドリーを使用しなければいけなくなります。
新しい洗濯機を購入したとしても、買った日に取り付けをしてもらうということはないため、電気屋が工事に来れる日まで待たなければいけなくなります。特に繁忙期の時期は電気屋も忙しく、取り付けまでに1週間以上かかる場合もあります。
洗濯機を中心に新居を選ぶ方というのは少ないと思いますが、新居を選ぶ前に洗濯機回りについても確認しておく必要は十分にありますので、間取り図を営業マンに見せながら、キチンと確認するようにしましょう。