標準引越運送約款とは~物損事故やキャンセルのトラブルを未然に防ぐ

標準引越運送約款とは何か?
れな
引越し屋さんに運んでもらったパソコンのデータが消えちゃったよー。でも『壊れたら全部直します』って言ってたから直してもらおう!
のぼる店員
パソコンのデータの修復は、標準引越運送約款で「補償しなくてよい」とされています。心苦しいのですが、ご対応は出来ません…。
ちはる
そんな話聞いてないわ!直してもらわないと困るデータがいっぱいあるの!そんな対応しかできないんだったら頼まなければよかった!標準引越運送約款だって詳しく解説してもらえなかったわよ。

標準引越運送約款には「引越しのルール」が書かれている

アート引越センターの標準引越運送約款

標準引越運送約款(ひょうじゅんひっこしうんそうやっかん)とは、引越しをする際にトラックを貸し切って行われるもの、つまり「混載便」と呼ばれる他の人との相積み便を除くものに対して適用される引越しのルールです。見積もり時に渡されるパンフレットや見積書の裏側に必ず印字されています。

引越し業者の営業マンはこの約款の説明しなければならない義務があるのですが、書いてある内容全てを説明すると途方も無く時間がかかってしまうため、パンフレットを渡して「読んでおいてください」と案内するだけのことがほとんどです。

それによって今回のようなトラブルに発展し、結果的に引越し業者の言いなりになってしまうことが多いのです。細かくて読むのが億劫になる気持ちも分かりますが、内容は引越し前に「必ず」読んでおいた方がいいです。

ちはる
説明してくれないなんてひどいわ…。職務怠慢じゃない!
のぼる店員
そう言われてしまうと返す言葉はありません。悪いのは完全に引越し業者です。ただ、引越しの相見積もりの度に同じ話をされるのも大変のはずです。また引越しの見積もり最中それとなく説明はしているため、全く放棄しているわけではありません。

標準引越運送約款を読んでおくだけで引越しトラブルを回避できる

標準引越運送約款を引越し業者が使うのは、約款を盾に事故を言い逃れできる場合です。

仮に何か事故やトラブルがあったとき「お渡ししたパンフレットの標準引越運送約款には〇〇と書いてありますので…」といわれることが多いので、引越しが終わるまでパンフレットを捨てず、また内容を熟読しておく必要があります。

トラブル事例①:物損事故が起きた

標準引越運送約款第9章「責任」の項目では、事故が起きても補償する責任を負わない場合について記載されています。

特に物損事故については「荷送人(引越しする本人)、荷受人の故意または過失の場合は責任を負わない」と記載されているため、どちらが傷を付けたかあいまいな場合は「標準引越運送約款では…」としか引越し業者が言わなくなる場合があります。

これは明らかに引越し業者が付けたであろう傷についても、現場作業員が確認していなければ同じ対応となります。実際私が引越し業者に在籍していたときも「引越しが完了した後に発覚した物損事故については、確認が取れるまでは責任を認めてはいけない」と会社から教わっていました。

引越し中に嫌な音や違和感があった場合は、引越しを実際におこなっている現場作業員に確認しなくてはいけません。引越し最中に見られなかったところについても、現場作業員が帰る前に確認するとトラブルを防ぐことができます。

トラブル事例②:追加料金が発生した

標準引越運送約款第8章「運賃」の項目では、「当日に追加になったサービスについては引越し業者は追加料金を請求できる」という知らないと怖い記載がされています。こちらの不注意で増えてしまったものについては何も言えないのですが、これには「引越し業者の不注意で増えたサービス」も含まれます。

つまり、「実際に行ったサービスについては、言った言わないに関わらず料金を請求する」という内容です。

例えば、「10万円でやります」と話が進んで、その後有料で洗濯機の取付なども一緒に依頼した場合を考えてみます。見積書には引越し業者のミスで洗濯機の取付工事が記載されておらず、しかし料金は10万円。多くの方は「頼んだのだから入っているもの」と当日まで確認をしないかもしれませんが、これは当日ほぼ100%料金が請求されます。客側(あなた)が「10万円でやると言ったじゃないか」と言っても「約款では…」と言い逃れがされてしまいます。

また、第8章にはキャンセル料についての記載もあります。「引越し前日にキャンセルした場合は契約金額の10%、引越し当日のキャンセルは20%のキャンセル料がかかる」という内容です。

「キャンセル料はかかりません」と説明する営業は意外と多いのですが、それは上記のケース以外、つまり「引越し2日前のキャンセル」の話になります。ただ事務的なことを考えると、遅くとも3日前にキャンセルの連絡を入れるようにしてもらうとトラブルを防ぐことができます。

トラブル事例③:運んではいけない家財がある

ピアノ運送専門業者がピアノを運んでいる様子

標準引越運送約款第3章「引き受け」では、引越し業者が断っても良い家財が記載されています。初めて引越しを経験される方は、引越し業者はどんな荷物・家財も運んでくれると勘違いしている方が多いのですが、それは違います。

引越し業者が運ぶのを拒絶するものは主に「携帯できる貴重品」と「特殊な管理を要するもの」の2種類です。具体的には、以下のようなものが挙げられます。

携帯できる貴重品 金品、宝石、時計、スマートフォン、その他高価で小さいもの
特殊な管理を要するもの 動植物、ピアノ、美術品、骨董品、その他高価で大きいもの
れな
引越し屋さんのくせに運べないもの多すぎじゃん!
のぼる店員
どちらかというとこれは「引越し業者」を守る決まりです。例えば、熱帯魚が入った状態の水槽を「お任せ下さい!運びます!」と言われても、絶対に不可能なのは目に見えていますよね。引越し業者は「物を運ぶ」ことについてはプロですが、その扱いや管理については全くの素人。そのため、引越し業者が「難しい」と判断したものについては拒否できるようにしています。

実態としては、ピアノは専門業者に任せ、生き物についてはお客様と一緒に(又はお客様ご本人が)移動してもらうことが多いです。しかし、植物と美術品の移動については現場作業員で行うことが多かったです。しかし、「枝葉が折れても構いませんね?」「傷がついても構いませんね?」という確認・許可は現場作業員に必ずさせていました。

危険!標準引越運送約款ではなく「独自約款」を使う業者

料金が異常なまでに安い業者や、繁忙期のみ引越し業務を行う業者は、共通の標準引越運送約款ではなく独自で作成した約款を提示してくる場合があります。これを「独自約款」というのですが、独自約款を使用する業者には引越しを任せてはいけません。

標準引越運送約款には、顧客を守るために「誤解の生じるような見積書」を作らないための取り決めや、こちらが引越しの中止を指示できる旨も記載されています。しかし、独自約款はこれらの記載を一切排除し「引越し業者は〇〇について責任は負いません」といった引越し業者が有利になるような内容を付け加えています。

そのような業者に引越しを任せてしまうと、玄関に荷物をすべて置き去りにされて帰られてしまっても文句が言えない場合があります。

アートやサカイ、日通など大手引越し業者はそのブランドや信頼もあるため絶対に独自約款は使いません。しかし、とにかく「数」や「実績」が欲しい中小引越し業者や、「引越し難民」を狙った普段は引越し業務を行わない運送業者などは、自分たちが有利に進められる独自約款を使い、見積もりの段階では「激安」で引越しを請負い、その後追加料金を取るというやり方をします。

引越し料金が安いからと、相見積もりをせずに独自約款を使用する業者に任せてしまうのは非常に危険です。標準引越運送約款を使っている大手業者は高そうで嫌だという気持ちも分かりますが、相見積もりを取れば適正額は見えてきますので、手間でもその手順は踏むようにしましょう。

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